14.down tempo系
15.choir系
16.ピクチャー盤
17.strings
18.europe
19.eurojazz
20.usjazz+reissue
21.usjazz
22.jazz+latin
23.monica
24.delerue
25.forktronica
26.euro Jazz 02
27.italian jazz
28.electronica+bossa
29.jazz_new
30.old & new
31.mirabassi & others
32.beat & soft rock
33.chill out & bop
34.post rockeletronic
35.acoustic
36.british jazz
37.morr+jazzland
38.hip hop
39.eurojazz+reissue
40.euro+french
41.acoustic+nordic
music_new
Mike del Ferro
「Made in Brazil」Mike del Ferro / MUZAC Records
 オランダ人ピアニストが、ブラジル人ミュージシャンと組んだ作品。デル・フェロ自身がここ数年は毎年、ブラジルに旅するほどのめり込んでいたという。ただし全編ブラジリアン・テイストというわけではない。そこがこの作品の現代性であって、ピアノ・ソロで奏でられるエンニオ・モリコーネの作品。あるいは「アルビノーニのアダージョ」のようなクラシック曲。こうしたヨーロッパの落ち着いたテイストが南洋のなかに入り込むのだ。灼熱の海と黄昏どきの凪。凡庸でない作品とはこういうもののことを言うのだ。オーギュスト・マッケの絵画作品を使ったジャケット・デザインは僕自身が手がけた。
Fabrizio Bosso
「Angela」Fabrizio Bosso encontra Riccardo Arrighini Trio / Philology Records
 リッカルド・アッリギーニは今、売り出し中のイタリアの俊英ピアニスト。と書きながらじつはこのCDは彼を目的としたものではなく、ファブリツィオ・ボッソの演奏目当てだ。この6〜7年くらいのボッソの演奏はどれも最高で、個人的には世界のジャズ・トランペットの頂点に君臨していると思う。推測になるがボッソが影響を受けたのはディジー・ガレスピーであり、クリフォード・ブラウンであり、すこしだけチェット・ベイカーだ。ところで肝心のリッカルド・アッリギーニのピアノは少々うるさい。同じ音を連弾するという古い手法も鼻につく。それでもボッソの素晴らしさだけで必聴の価値あり。
Trio Melero
「Beleza Pura」Trio Melero Minguez Lovino
/ Rip Curl Recordings

 ブラジルではなく隣国アルゼンチンのトリオによって2005年に録音されたこの作品は、今まで聴いたボッサノヴァ・アルバムのなかでも最も美しいもののひとつだ。ジャヴァンの名曲「Oceano」でのミンゲスのピアノの見事さ! MPB世代のシコ・ブアルキの名作「O Que Sera」のコーラスの重なりの美しさ! MPBも古典的なボッサ風にしているところも見事。ミレーロとイオヴィノの二人の女性がヴォーカルを取っているが、それぞれギターとパーカッションをこなし、音楽的な完成度の高さに驚かされる。それ以上に驚かされるのが、これほどの才能を持ちながら1枚しか作品を発表してないことだ。
Marianna Leporace
「Canta Baden Powel」Marianna Leporace / おもちゃ工房
 2000年に亡くなったブラジルの名ギタリスト、バーデン・パウエルへのトリビュートとして日本で企画された作品。個人的な好みを言わせてもらえば、バーデン・パウエルは、ボッサからアフロ・サンバへときり拓いていったなかで最も好きなギタリストだ。彼の「All The Things You Are」は、何百と録音されたこのスタンダード曲のなかでも最高といっていい。作曲家としての才能もピカイチで、本作は彼の名曲の数々をマリアーナの繊細な歌声で聴ける。有名な「ソー・ポル・アモール」のせつなさは涙ものだ。ボッサノヴァが古くさい音楽とブラジルでは思われている現況を考えると全曲、心に沁み入る。
Nicola Conte

「RITUALS」Nicola Conte / Schema Records
 ニコラ・コンテに関しては、ずいぶん昔からこのコーナーで紹介してきた。音楽雑誌なんかよりずっと早くに。古いところではイタリア・ジャズ界の若手を集めてバッソ=バルダンブリーニ風のモダン・ジャズ復興を目指したSchema Sextet。そうしたモダン・ジャズとクラブ・ジャズの融合を目指したのがこの作品だと思う。ヴォーカル曲がお洒落で秀作揃いの作品だが、最も聴き応えあったのはダスコ・ゴイコヴィッチ作の「Macedonia」。トランペットのファブリツィオ・ボッソの吹きまくりが最高だ。ニコラ・コンテ自身もギターで参加しているが、こちらは下手過ぎてご愛敬。

Dizzy Gillespie
Dizzy Gillespie & The Double Six of Paris / Philips Records
 スキャットなどを多用したパリのモダン・ジャズ・コーラスグループ「ダブル・シックス・オブ・パリ」とディジー・ガレスピーを共演させてしまおうというとてつもない企画。トランペット界最高の早弾きで知られるディジーにどうやってコーラスが追いつけるのか? ヴォーカル・アレンジをラロ・シフリンが担当、ミミ・ベリンが作詞、そのミミ他のDouble Sixのメンバーもディジーの演奏にユニゾンでコーラスをつけるところがいくつもあり、そのテクニックだけで唸らさせる。曲も演奏も最高。11曲目の「Con Alma」の美しさには泣ける。63年録音の待望の再発だ。
Ana Laan
「oregano」Ana Laan / Liquid Records
 スペインのマドリッドにある「シエスタ」レーベルは2000年前後、世界で最も良質なポップ・チューンを量産していた。だが、日本に入ったのは少数で今でもこのレーベルのものを見つければ買っているが、これはシエスタで最も人気の高かったRita Caripso名義の中心人物、アナ・ラーンのソロ。曲もアレンジもRita時代の比ではない完成度の高さ。マドリッドに生まれストックホルムで育ったことが、絶妙に北欧的静謐さをもったヴォーカルに反映されている。最後にスウェーデンの民謡を多重録音のコーラスのみで歌っている曲はモニカ・セッテルンドを思わせる美しさ。
Janet Seidel
「Sweey Days 1992-2009」Janet Seidel / MUZAC Records
 ジャネット・サイデルは良い!ほんとここ数年の作品はどれを聴いても良いのだ。ウクレレがバックの『マナクーラの月』はジャズだなんだというレベルを超えて楽しめたし、ヘンリー・マンシーニによる映画音楽ばかりを扱った『シャレード』も良かった。そんなジャネットの日本独自企画によるベスト盤が本作。初めて聴くという人にはピッタリでしょう。僕はシンガーは声質が良くないとダメだ。つまらぬポピュラー歌手の多くは声質が凡庸だからツマラナイ。で、ジャネットはセンスも声質も良し。そのうえ、ジャケットのイラストは水森亜土が描き下ろしたといえば、これ以上の贅沢があろうか?
Yvonne Walter
「I wish I knew」Yvonne Walter / MUZAC Records
 イヴォンヌの声質、歌い方は一聴してヨーロッパのジャズ・シンガーとわかる。なぜかというと僕は一部を除いてアメリカのジャズ・シンガーにほとんど興味をもってこなかったからだ(とはいえスイング時代の主な歌手の作品はほぼ持っている)。本作はコルトレーンのヒット作『バラッズ』からの多くをとって録音されたもの。インパルス主導によるコルトレーンのバラード路線はあまり好きではないが、イヴォンヌの歌は素晴らしい。ちなみに17歳から19歳の2年間、僕はジャズ喫茶に通ってコルトレーンに明け暮れた。今でも最も好きなジャズ・ミュージシャンだ。このジャケ・デザインも僕が手がけた。
Chet Baker
「I Get Chet...」Chet Baker with Bobby Jaspar
/ LPTIME Records

 チェット・ベイカーが1955年から56年にかけてさまざまなミュージシャンと録音した音源の復刻。三つのカルテット、それにチェット率いるオーケストラによる録音ということでバラエティに富んだ構成になっている。チェットはパリにもミラノにも演奏旅行に行き、けっこうな録音を残しているが今では聴きようもないものもたくさんある。本作も長く廃盤だったものをジャケを50年代風の美女ジャケに変えての再発。ミラノ録音でも同じようなのが一時出て、内容も良かったのに手放してしまって後悔している。チェットの作品は良いもの、そうでないものとかなり幅があると思うが、これは良い。
©Hitoshi Nagasawa 無断転載を禁ず。2009/09/30