14.down tempo系
15.choir系
16.ピクチャー盤
17.strings
18.europe
19.eurojazz
20.usjazz+reissue
21.usjazz
23.monica
24.delerue
25.forktronica
26.euro Jazz 02
27.italian jazz
28.electronica+bossa
29.jazz_new
30.old & new
31.mirabassi & others
32.beat & soft rock
33.chill out & bop
34.post rockeletronic
35.acoustic
36.british jazz
37.morr+jazzland
38.hip hop
39.eurojazz+reissue
40.euro+french
41.acoustic+nordic
42.jazz+bossa
music_new
「French Kiss」Charles Loos Trio / LYRAE Records
チャールズ・ルースはベルギーのピアニストで、そう若くはないが、このアルバム以前にも『Secret Laughs』をリリースしているから知っている人もいるかもしれない。この作品は2003年3月に録音されたもので、トリオによる演奏。しかもいかにもピアノトリオらしい美しい旋律に満ちた作品群だ。フランソワーズ・アルディの大ヒットで知られる「さよならを教えて」からジャック・ドゥミの映画『ロシュフォールの恋人たち』(傑作!)の「双子姉妹の歌」までシャンソンを中心にしたあざといくらいの選曲。まあ、これを試聴してしまったら買わないわけにはいかないだろう。
「the feather」Sergey Manoukyan Trio / gats production
ロシアのドラマーがリーダーのトリオなんて、いったいどんな感じなんだ? と聴いてみると、これがまっとうというか正統派というか、これもピアノトリオなのだが、その王道をいったような感じ。「クライ・ミー・ア・リバー」は、テーマからの展開して行きかたがセンス良く、「タマリンド・ガール」では、気持ちの良いスウィング感が味わえる。まあ、もう少しスラブ的特徴でもだしてもらったほうが面白いが、これはこれでよくまとまった1枚だ。昔、50年代ロシアのジャズ・ミュージシャンを扱っ『JAZZMEN』(83)という映画があったが、今でもロシアのほうの情報ってなかなか入ってこない。もう少し知りたいところだ。
「The Night Gone By」Enrico Pieranunzi Trio /ALFA MUSIC
廃盤になっていたエンリコ・ピエラヌンツィ1996年の録音が再発された。イタリア生まれのこのピアニストを人はみなエバンス派という。まるでビル・エバンスそのもののようにいう人もいる。ジャズ界はともかくそういう系統分けが好きだ。家元制じゃあるまいし。たしかに知的な弾き方も近いし、本人もリスペクトしているらしいが。この作品は1曲目の「Yesterdays」が聴かせる。僕はエバンスよりも今のヨーロッパ・ジャズ、ミラバッシやシャフラノフにも通ずるフレーズを感じた。5曲目の彼のオリジナル曲「Canzone Di Nausicca」がメロディも美しく、ベースのマーク・ジョンソンもいい。
「Modern Windows Suite」Bill Baron / SAVOY
ビル・バロンのことを知ったのは5〜6年前に出た『Spacy Soul on Savoy』というかなりマニアックなコンピの6曲目、ギル・メレを思わせるような最高のハードバップが入っていたことだ。それがビル・バロン。ちなみハーピストのドロシー・アシュビーもこのコンピで知った。ライナーがロックな湯川れい子(プレスリー・マニアの!)で無知で何ひとつ詳細は書かれていなかった。バロンは22年にフィラデルフィアで生まれた。58年にN.Y.に移ったバロンは61年に本作を録音する。先の述べた6曲目「Back Slash」は本作にも収められている。ペットのテッド・カーソンもいいし、ベースにはジミー・ギャリソンが入って、すべての点においてレベルが高くかっこいい作品だ。
「SAHIB SHIHAB and THE DANISH RADIO JAZZ GROUP」Sahib Shihab / OKTAV
このレコードは澤野工房からけっこう前に出ていたが買いそびれていたものだ。サヒブ・シハブ(bs,fl,as)という名はどう見ても中東系だが、生まれはアメリカ。60年代にヨーロッパに渡り、65年にコペンハーゲンで当地のジャズメンと録音した。彼には珍しいリーダーアルバムで、しかも全曲サヒブの作曲。これがものすごい! 1曲目のベースの唸りから始まるスピード感溢れるプレイ、そこから3曲目までの息も継がせぬようなハードバップ系のほんとうに格好いいプレイ。サイドメンは若干変わるが、ともかくどれも全員のプレイがすばらしく、まさしくジャズ史に残る大傑作。澤野工房が発掘しなかったら……『ジャズ100選』みたいな本を書く輩は、いったい何を聴いているのだ?
「Vocal Virtuoso:Collection 1977-1997」Jana Koubkova / em RECORDS
チェコを代表するジャズ・ヴォーカリスト、ヤナ・コブコヴァの1977年から97年までの作品をピックアップした2枚組。44年生まれでソロでのファースト・レコーディングは77年だから、遅咲きといってもいいくらいだ。70年代ジャズ特有の浮遊感やフリーキーな部分をスキャットを用いたりして、絶妙に表現している。音楽的には70年代のものがやはり圧倒的に個性的で素晴らしい。とくに4曲目のギターをバックにした透明感ある曲は美しく、また東欧の空気感も出ている名曲だ。80年代以降は少しコマーシャルな方向に流れてしまう。1曲、完全にフリージャズ化してしまう曲があって、これはちょっと聴くのも難儀なアヴァンギャルド。
「Latin Cool」CUBAN JAZZ COMPILATION / Kamita Label
先日、赤坂のクラブでポンチョス・サンチェスのアフロ・キューバンなライヴに行って、かなり面白く、あまりに客が少なく残念だった。キューバン・ジャズのコンピレーションである本作の内容は、さまざま。いきなりマンボで始まって、やっぱキューバねえ。なんて甘く見ていると6曲目なんてすごいスピード感の曲で圧倒されたりもする。ペットのマリオ・エルナンデスはディジー・ガレスピーくらいの早弾きだ。ゴンサロ・ルバルカバがピアノに入った『ソング・フォー・アルヘンティーナ』はソプラノ・サックスのジェーン・バネット作曲。彼のリリカルなソプラノが絶品。今のキューバのジャズが聴ける作品。
「SOFTLY!」Wanda de Sah / Capitol
最後に夏向けにとりわけ気持ちよい1枚を。ワンダ・サーは、いまだによく来日するボサノヴァの歌手だが、これは渡米中の65年にワンダ・ヂ・サー名義に発表されたものの再発。65年といえば前年あたりからアメリカでも大ボサノヴァブームで、このアルバムも米国市場を意識して全曲英語で歌われている。その全盛期の60年代に彼女が残した純粋なリーダーアルバムは本作とデビュー作『ヴァガメンチ』(64)しかない。ワンダ特有のほんの少しかすれそうな、ちょっと低めの声が絶妙に良くて、どの曲を聴いても気持ちよく60年代の夏の浜辺にワープできてしまうような佳作だ。
©Hitoshi Nagasawa 無断転載を禁ず。2003/07/31