14.down tempo系
15.choir系
16.ピクチャー盤
17.strings
18.europe
19.eurojazz
20.usjazz+reissue
21.usjazz
22.jazz+latin
23.monica
24.delerue
25.forktronica
26.euro Jazz 02
28.electronica+bossa
29.jazz_new
30.old & new
31.mirabassi & others
32.beat & soft rock
33.chill out & bop
34.post rockeletronic
35.acoustic
36.british jazz
37.morr+jazzland
38.hip hop
39.eurojazz+reissue
40.euro+french
41.acoustic+nordic
42.jazz+bossa
music_new
「The Chant of Tme」Enrico Pieranuzi trio / Sarah
今回はラジオ〈FMいるま〉の番組「What's Jazz」でイタリアン・ジャズ特集を組んで出演したので、ここでもイタリア特集だ。という時期にタイミングよく、エンリコ・ピエラヌンツィ来日。49年生まれで、今のイタリアのジャズ・ピアノ界を代表する彼の、この作品は97年に日本の企画でNYで録音された。廃盤になっていたのが昨年末、再発されたものだが、何といっても1曲目の「Thiaki」(チアキ)が最高。Bassのマーク・ジョンソンとDrumsのジョーイ・バロンとは84年に一度、録音を残しているが、アルバム全体を通して絶妙のトリオぶり(今回の来日メンバーもこの面子)。この前の「The Night Goed By」よりも、こちらのほうがオススメ。
「The Kingdom」Mads Vinding Trio / Stunt Records
前回、取り上げたデンマークのベーシスト、マッズ・ヴィンディングとイタリアのピエラヌンツィが共演した97年の録音。これも1曲目「Alba Prima」のリリカルだが、ひじょうに緊密感のある演奏が最高。ピエラヌンツィの作曲によるものだ。しかし、どの曲を聴いてもすごいと思わせるのはヴィンディングのベース。タイトル曲「The Kingdom」は、ベースが最初にメロディラインを担うバラードだが、こうした曲から4曲目のバップ・テイストまでヴィンディングのベースは、どんな曲であれ最高のプレイをしている。「My Foolish Heart」のベースなんて本当にグッとくる。デンマークを代表するレーベルに成長した〈STUNT〉の作品はどれも質が高い。
「AIR」Mirabassi Boltro Ferris / SKETCH
ちょっと紹介が遅れたがジョバンニ・ミラバッシの新作は、ベースレス、ドラムレス。トランペット、フリューゲルホーンのフラビオ・ボルトロ、トロンボーンのグレン・フェリスの2管とのトリオ編成という変則的なものだ。それでもミラバッシ節は、まったく変わらないから彼のフレージングをこよなく愛するものとしては、編成がどうあれ、ミラバッシは最高なのである。しかし、2管のみのピアノ・トリオで、これほどまでに完成度も高く、何の「欠落感」も感じさせないアルバムなんて誰が想像できただろう。「Mement Mores」や「Jean-Paul Chez Les Anges」は、前作のライヴ盤にも収められていたので聴き比べると面白いだろう。
「urka」Luigi Martinale Trio / DDQ
ルイジ・マルティナーレは、86年にヴェルディ音楽院を出た俊英ピアニスト。若手トランペッター、ファブリツィオ・ボッソと2000年に最初のアルバムを出し、翌01年にはトリオで「Sweet Marta」という大傑作を残している。聴いてはいるが入手できてなく、残念ながらここでは紹介できなかった。02年に出したのが本作で3作目にあたる。やはりボッソとの共演盤(ちなみにファブリツィオ・ボッソは、ジャンルカ・ペトレッラらとともに、このコーナーでも紹介したニコラ・コンテ、プロデュースのSCHEMA SEXTETに参加している)。本作は数曲、ルーツ・ジャズ的な曲があり、そこだけ気に入らなかった。欧州は「古い欧州」でいけばいいのだ。イタリアもイラクから撤退すべきなのだ。
「Italian Ballads」Enrico Rava / Venus Records
96年の作品だが、イタリア特集をするならコレはどうしても省けない。日本のVenus Recordsの企画だが、素晴らしい選曲と素晴らしい演奏。ニーノ・ロータの「ジェルソミーナ」で始まり、「帰れ、ソレントへ」も入り、プッチーニのオペラ『ジャンニ・スキッキ』の「私のお父さん」(オペラで最も好きな曲だ)で終わる。全12曲すべてがイタリアそのもの。しかもエンリコ・ラヴァのトランペットもリリカルで美しい。最高なのは4曲目の「Il Ciero in Una Stanza」。フランスを代表するアコーディオン奏者のリシャール・ガリアーノとラヴァのトランペットの絡みがひじょうに美しい曲で、演奏としてもこのアルバムの白眉だろう。今回の特集のなかでも最も愛するアルバムだ。
「La Dolce Vita〜Jazz in the Movies」Tommaso / Rava Quartet / C.A.M.Srl
ジョバンニ・トンマーゾは41年生まれのベーシストで70年代後半から80年代前半までラヴァのカルテットのメンバーでもあった。その彼がラヴァと組んで映画音楽、それにトンマーゾ、ラヴァそれぞれが映画をイメージした曲を書き下ろして制作したのが、このCD。「モア」「情事」「甘い生活」などとともに映画音楽のようなラヴァのオリジナル「Ammazzare il Tempo」などが挿入されている。ピアノは、ステファノ・ボラーニ。71年生まれの若さだが、このアルバムでの彼のピアノは特筆すべきもの。音が立っているし、曲によって違う音色も魅力的だ。ラヴァやパオロ・フレスが共演したがるのも頷ける。
「Happiness is...」Enrico Rava Jazzpar 2002 Sextet / philter Records
2002年、世界的に知られるジャズ賞〈JAZZPAR PRIZE〉を受賞したエンリコ・ラヴァがそれを記念して演奏したときのライブ録音盤。何といっても面子が凄い。今、最も注目され、ラヴァとの共演も多いイタリア人ピアニスト、ステファノ・ボラーニ、トロンボーンにジャンルカ・ペトレッラ、ギターは世界的に活躍しているジョン・アバークロンビー、ベースはデンマークの俊英イェスパー・ボディルセン、ドラムスはモルテン・ルンド。もちろんこの面子で演奏が悪かろうはずもない。どれも緊密で素晴らしい演奏。昔はフリーに走ったこともあるラヴァも、歳とともに(39年生まれ)叙情性を増した演奏に変化したが、それでも瞬発力に陰りはない。若手の演奏がそれを支えてもいる。
「There's No Greater Love」Rava / Rusca Trio & Strings / GMG Music
イタリアン・ジャズ界のベテラン・ピアニスト、マリオ・ルスカのトリオにエンリコ・ラヴァとストリングスが加わったちょっと変わったアルバム。ただストリングスも全編ではないので、カルテットの演奏も十分に楽しめる。ルスカのストリングス・アレンジは、あまり良いともいえないが、それでもラヴァの円熟して完璧な美しさをもったペットにストリングスが絡んで、それを休日の夕暮れあたりに一人で聴いていると、ちょっと泣けそうになる。曲は「Smile」「As Time Goes By」「Over The Rainbow」など、ハリウッド映画の名曲が中心。ルスカのピアノもなかなかいい。
「There's No Greater Love」Renato Sellani meets Gianluca Petrella / philter Records
50年代、バッソ・ヴァルダンブリーニ・クインテット(セクステット)などでピアノを弾いていたのが、このレナート・セラーニだ。63年には初のリーダー作「Un Pianoforte Per Due Innamorati」という大傑作アルバムを残している(これは90年代後半にSCHEMAからCDが復刻されたが、残念ながら現在、入手不能)。その後の活動についてはあまり知られていないが90年代後半から、かつての盟友バッソ同様、大復活という感じで新作を次々とリリースしている。これは、さっきから名の出ているトロンボニストのジャンルカ・ペトレッラを加えた1ホーン・カルテット。「枯葉」「Laura」「Stella by starlight」などスタンダードの超名曲揃いです。
「Chet Baker 1959 Milano sessions」Chet Baker Sextet etc... / GMG Music
チェット・ベイカーの59年のミラノ録音をCD化した本作には2種類のまったく違う録音が収められている。一方はストリングスをバックにチェットのペットがフィーチャーされ、また彼が甘く歌う10曲。そして後半に4曲、別の日の録音でセクステットによる典型的にウェストコースト的なバップ演奏が付け加えられている。興味深いのはこの4曲の共演がジャンニ・バッソ(ts)やレナート・セラーニ(p)だということだ。ペットのヴァルダンブリーニは、チェットとかちあうので参加しなかったのだろう。そして、ここで最高にホットな演奏が繰り広げられる。チェットとバッソの掛け合いも最高だ。当時のイタリア・ジャズ界のレベルは、再評価されるべきだろう。
「Parlami D'amore Mariu'」Basso - Valdambrini Quintet / GMG Music
というわけでイタリア・モダンジャズ界の草分けバッソ-ヴァルダンブリーニ・クインテットの登場だ。僕が最初に彼らのことを知ったのがアナログ盤でRCA ITALIANA原盤の佳作がシリーズで1994年に復刻されてのことだ。アルマンド・トロヴァヨーリなどとともに、彼らの作品も2作、復刻された。評論家はウェストコースト・ジャズそのものと、決まりきった凡庸な表現をするが、僕は当時のイタリアン・デザインのモダニズムの音楽化という印象をもった。彼らの音楽はまさにモダニズム・デザインの生活様式から生まれたものだ。最近CDでの復刻が盛んで、これもそのひとつ。62年のセクステット録音の復刻を切に願うが、本作も「Topsy」など名演揃い。59〜60年の録音。
©Hitoshi Nagasawa 無断転載を禁ず。2004/03/31