14.down tempo系
15.choir系
16.ピクチャー盤
17.strings
18.europe
19.eurojazz
21.usjazz
22.jazz+latin
23.monica
24.delerue
25.forktronica
26.euro Jazz 02
27.italian jazz
28.electronica+bossa
29.jazz_new
30.old & new
31.mirabassi & others
32.beat & soft rock
33.chill out & bop
34.post rockeletronic
35.acoustic
36.british jazz
37.morr+jazzland
38.hip hop
39.eurojazz+reissue
40.euro+french
41.acoustic+nordic
42.jazz+bossa
music_new
「alegria」Wayne Shorter / VARVE
今回は久々に米国ジャズからだ。ウェイン・ショーターのこの新作の目玉は、ブラジルの作曲家ヴィラ=ロボス(1887-1959)による「バッキアナス・ブラジレイラス」だろう。ブラジル伝統のショーロからクラシックへと近づいたロボスが1930年代から40年代にかけて作曲した「ブラジル風バッハ」。弦楽器によるテーマに始まり、ショーターのサックスがそれを継ぐ。思うに彼は60歳を過ぎてずいぶんとスピリチュアルな傾向を増してきたように思う。ここで言うスピリチュアルとはジャンルとしてではなく、その言葉通りの精神性において。コルトレーン晩年のある「純化」されたものに近い印象を受ける。
「BLUESAND」Karin Krog & Jhon Surman / UNIVERSAL RECORDS
「ブラジル風バッハ」のあとにはバッハの「G線上のアリア」をもってこよう。ノルウェイのカーリン・クローグは60年代から、かの国を代表する女性ジャズ・ボーカリストであり続けた。その彼女が長年、活動をともにしているサックスのジョン・サーマンと共同名義で出したのが本作で、日本のCM曲として録音された「G線上のアリア」がボーナス・トラックとして1曲目を飾っている。カーリンは、その美しいメロディをスキャットしてゆく。かつて「ヴォカリーズ」でSLAVAがやったのと匹敵するほどに美しく。しかも別プロジェクトとして録音されたそれ以外の曲のどれもが素晴らしい出来。
「raindrops,raindrops」Karin Krog / clipled dick hot wax
本当は今回は「再発盤特集」として、カーリン・クローグのこのアルバムから始めたかった。彼女の1970年から79年にかけて録音されたアルバムからの編集盤。なかでも最高作といわれる「We Could be Flyng」からの収録が多く、そのスピリチュアルな前衛性と美しさは涙ものだ。1曲目の「Meaning of Love」から4曲目の「New Spring」あたりまでは、ほんとうに凄い。ちなみに「We Could……」のアナログ原盤の市場価格は5万円くらい。いままで聴けなかった驚くべき名作の要所がこの時期、アナログとCDで同時再発されたことは、まさに僥倖というほかない。
「mad about the boy」Cybill Shepherd / crepuscule
再発、といえば以前にこの欄でも書いた女優シビル・シェパードの78年のボーカル作品もやっと手にいれた。もっと他に欲しいものがあって、後回しになっていた。シビル・シェパードといえば、ぼくなぞは71年の映画『ラスト・ショー』をリアルタイムで観ているくちで、彼女が色気のない下着を脱ぐ木訥さがつよく印象に残っている。その後、ジャズ・ボーカリストとしても何枚か作品を残しており、本作はスタン・ゲッツと共演したものだ。ゲッツのクールな響きとシビルの声が絶妙にあっていて、これはこれで都会的な洒落た作品といってよいだろう。なんとクレプスキュールからの再発!!
「Afro-Harping」Dorothy Ashby / CADET
ドロシー・アシュビーを最初に聴いたのはサヴォイ・レーベルの曲をコンパイルしたCDでだった。そこに収められた彼女の1曲に驚くほど感動し、時々出るローカルなジャズFM番組でも紹介したものだ。彼女は黒人の女性ハープ奏者で、ジャズ界ではマイナーな楽器のためか、案外に名前も知られていない。57年の「The Jazz Harpist」が上記の曲を収録して最高だが、それ以外にもフランク・ウェスとの58年の共作「In a Minor Groove」なども悪くない。本作はずっと下って1968年の作品。時代のスピリチュアルやアフロ感覚もあって、彼女の演奏もずいぶんと変化している。でもスウィンギーな力作だ。
「FOOLS RUSH IN」Anne Shelton / Nostalgia NAXOS
今回は選曲がめちゃくちゃになってしまったが、10代の頃から好きなスイングの作品をひとつ。最近は中古屋でもスウィングやスウィート・ミュージック系は、ほんとうに少ししか置いていない。そんななかでCD化されたのが、アン・シェルトン。1940年から41年にかけてアンブローズ・オーケストラというバンドで録音されたものだ。スウィングはダンス用、あるいはナイトクラブ用の音楽だったため、楽団の演奏がメインで歌手は途中から舞台にでて数フレーズ唄って下がるというのが多く、その添え物的風情が、ぼくにはなんとも素敵に思えた。大好きな「Fools Rush In」がやはりグッとくる。
「our noise」Herrmann & Kleine / MORR MUSIC
去年の今頃リリースされた作品で、ちょっと古いのだが、これもテクノ〜エレクトロニカ系の秀作ということでここで紹介しておきたい。クリスティアン・クラインとタデウス・ヘルマンによるユニットHerrmann & Kleineは、ノイズもチル・アウトも入ったきわめてインテレクチュアルな作品。クラインはベルリンでcity-centre-officesというレーベルも主宰し、ヘルマン&クライン名義では近々「kickboard girl」という新作もリリースされるようだ。僕は単調なループの続くミニマルなテクノは、『ele-king』のADをしてた頃から嫌いだが、でも彼らのようなさまざまな陰影をもったテクノは大好きだ。
「unrest」Erlend φye / SOURCE
選曲テーマに統一性がなくなってしまったので、なんとエレクトロニカ系から。このノルウェイ出身のアーランド・ボウイの作品は今年の春にリリースされたばかりのもの。「King of Conbenience」のメンバーでもある彼のソロ・デビューだが、まあ10代になったばかりの頃にクラフトワークを聴いてハマったと感じさせる作品。J-WAVEのどこかのサイトで「DURAN DURANを彷彿とさせる」と書いてたけれど、知ったかぶりの大間違い。ま、それはいいとして3曲目に収録された「Sudden Rush」を聴くためだけに買っても損はない。80年代テクノもこんなふうに再現されているんだなあ、と感慨ひとしお。
©Hitoshi Nagasawa 無断転載を禁ず。2003/05/26