14.down tempo系
15.choir系
16.ピクチャー盤
17.strings
18.europe
19.eurojazz
20.usjazz+reissue
21.usjazz
22.jazz+latin
23.monica
24.delerue
25.forktronica
26.euro Jazz 02
27.italian jazz
28.electronica+bossa
29.jazz_new
30.old & new
31.mirabassi & others
32.beat & soft rock
33.chill out & bop
35.acoustic
36.british jazz
37.morr+jazzland
38.hip hop
39.eurojazz+reissue
40.euro+french
41.acoustic+nordic
42.jazz+bossa
music_new
「Exquisite Corpse」Daedelus / Ninja Tune
ヒップホップからLoFi、エレクトロニカまで横断してしまっているサンプリングおたく、デーデラスのこの最新作は、ほんとうに素晴らしい。1曲目、ミシェル・ルグランの「I Will Say Goodby」をサンプリングしてドラムを乗せてしまった曲からして、美しくて切ない。そして2曲目「Impending Doom」ではBlack Mighty Orchestraの「オーシャン・ビーチ」のような南洋系のオーケストラのサンプリングにラップが重なる。全体にマーティン・デニーなどの古い音楽を聴いた上でのサンプリング、そしてそれをコラージュしてゆくという印象が強い。3曲目「Just Briefly」は、60年代のスキャット・コーラスにラップが乗る。世に切ない気持にさせるHIPHOPがあるとすれば、それはデーデラスの作品だけだ。
「Abscncen」Kammerflimmer Kollektief / Satubgold Records
ドイツのカールスルーエ出身のメンバー6人で構成されたカマーフリマー・コレクティーフ。中心になっているのはギター、シンセを繰るトーマス・ウェーバーで、97年にシングルにデビュー。当初はエレクトロニカ的と言ってもいい音だった。それがレーベルが潰れたりの変遷を経て、現在の生楽器による6人編成のグループとなった。トーマス自身はジャズからの影響も強いが、全体の印象は、生バンドのジャズというよりもエレクトロニカ的だ。1曲目、美しいメロディのアンサンブルをバックにアルト・サックスがフリーキーに吹きまくる。この1曲のために買ってもいい作品だ。全編、こうした構成が多く、それが新鮮で、刺激的かつ美しい。
「Yann Tiersen & Shannon Wright」Yann Tiersen & Shannon Wright / ic' d'ailleurs
日本でも大ヒットした映画『アメリ』のサントラを手がけたヤン・ティルセンと90年代にアトランタでオルタナ系バンド「クロウズデル」でギターとヴォーカル担当だったシャノン・ライトの、まあ奇妙なコラボレーション。ヤン・ティルセンの才能は認めるが、監督のジャン=ピエール・ジュネは最初の『デリカテッセン』から評価していなかった。日本のサブカル系はこういうの好きだね。『アメリ』にしたところで、たんに「フレンチ好き」の女のコにとっての「人生の救い」の映画だっただけだ。こういう作風の小洒落具合が好きって、ある一人種を形成しているよね。それはさておき、この作品は前半は寂しげで切ない佳曲。後半にオルタナのゴリにならなければ文句ない1枚だ。
「I'm What's There to Show That Something's Missing」Styrofoam / Morr Music
前回、取り上げたスタイロフォームの新作が素晴らしすぎて、2003年リリースのこの作品も買ってしまった。パピエ・コレのスタッフのユウゲンは、もっと昔のテクノ系のまで買ってしまって、これはちょっと×が入っていた模様。ちなみにこの作品は、arne van petegemの作曲能力の高さを感じさせる優れもの。この作品から全曲、ヴォーカルも入るようになり、曲調も変化してきて、それが最新作につながっている。最近のダウンテンポ、エレクトロニカ系が平坦で静謐なヴォーカル曲が多いので、自分でも作ってみようと試みたが、案外、バックをどこまでアブストラクトにするかが難しい。ともあれ、これと最新作は絶対に買っておくべき!
「Wind In The Wires」Patrick Wolf / Tomlab
アイルランド出身のPatrick Wolfの『Lycanthropy』に続く2作目。90年代に人気を博したUKのバンドPULPと声質から、ちょっとデカダンな雰囲気までかなり似た感じだ。ただ、違うところがあるとすれば、ウルフはもう少し新しいジャンルの世代に属しているということだろう。ヴァイオリンやテルミンなど、使う楽器も多彩で、そのあたりが「ロック系」出身でないクリエイティヴィティを感じさせる。(ロックってもはや若者のカタルシスにとしての存在か、田舎者のど根性か(博多?)、オヤジのノスタルジーか、そのどれかでしかないでしょ)。ジャケ内部にある写真を見ると彼のシャツの襟のデザインや持っているギターで、そのセンスがうかがい知れる。
「El Cielo Azul」Music For Siesta / rambling records
このコーナーで何回も取り上げているスペインの極上ポップチューン・レーベル「シエスタ」。その最新コンピレーションが日本のrambling recordsからディストリビューションされたこの作品。〈Club 8〉なんて懐かしい名前もある。僕がSiestaからの作品で最初に買ったのが、このボッサ系ユニットだった。全曲シングル・ヒットのようなポップさは変わらないが、そろそろ何か変化が欲しいところ。ゴリゴリ系のテクノが衰退して、最近のフォークトロニカ(フォーキーなエレクトロニカ)のような傾向が出始めたように、こちらも60年代A&M的なポップから、もう少し発展系が欲しい。
「At The Living Room」Marco Di Marco / Arision recordings
僕が大好きなマルコ・ディ・マルコ・トリオの1973年のパリでの録音が再発された。1曲目のマルコのエレピで、グッとくる。マルコ名義によるトリオの過去の録音としては90年代にbluesmilesから70年録音の音源がCD化されて再発されて以来ではないか。最近も健在のようで、ロンドンのクラブ・ジャズ・シーンきってのマルチ・プレイヤーNathan Hainesとの作品がリリースされたばかりだ。これは聴いてないので、何とも言いようがないがマルコの作品は今のユーロ・ジャズの似たような哀愁を帯びたメロディとも、アメリカのジャズとも違うオリジナリティがあった。あえて言えばイタリアン・モダニズム。ともあれ彼のピアノはいいセンスだ。
「Maya」Fabio Vernizzi Quartet / Splasc(H) records
良質の才能を発掘し続けているスプラッシュが、またしてもイタリアの俊英を発掘してきた。ピアニストのファビオ・ベルニッチ。最近のヨーロッパのジャズマンに顕著なことだが、彼もコンポーザーとして一級だ。1曲目の表題曲「Maya」の泣けるメロディで、もうグッとくる。ステファノ・マルチアンのソプラノ・サックスもいい感じだ。全9曲、そのすべてをベルニッチが作曲し、タンゴ風の4曲目など、興趣に富んだ作風で飽きさせない。ジャケのデザインのダサさには閉口するが、絶対に買って損のない1枚。ベースのリカルド・バルベラもいいゾ。
「Hipnosis」Carrousel / Stride
前作『Jazz』で話題になったミュンヘン出身のジャズバンド。「スピリチュアル」系で、しかもクラブでヘビーローテーションになっているとか。1曲目を聴いてナルホド、とつい買ってしまった。女性ヴォーカル入りの2ホーン・カルテットはカッコイイ。てな感じで、前半は70年代と現在を結ぶスピリチュアル・テイストがうまく生きているが、後半ちょっとフリーキーに変化してゆくところがイマイチ。フリー自体は好きなものも多々あるけれど、それっぽいのを今やってもネ、って感じなのだ。ちょっと音が厚くて暑すぎる感じかな。
©Hitoshi Nagasawa 無断転載を禁ず。2005/04/01