14.down tempo系
15.choir系
16.ピクチャー盤
17.strings
18.europe
19.eurojazz
20.usjazz+reissue
21.usjazz
22.jazz+latin
23.monica
24.delerue
25.forktronica
26.euro Jazz 02
27.italian jazz
28.electronica+bossa
29.jazz_new
30.old & new
31.mirabassi & others
32.beat & soft rock
34.post rockeletronic
35.acoustic
36.british jazz
37.morr+jazzland
38.hip hop
39.eurojazz+reissue
40.euro+french
41.acoustic+nordic
42.jazz+bossa
music_new
「nothing's lost」styrofoam / morr music
ベルリンのmorr musicからリリースされたスタイロフォームのこれは(たぶん)3作目。エレクトロニカと柔らかなヴォーカルが融合した聴き心地の良い作品で、ニルシュ・ダニエルソンにハマったあと、寝るときに聴くのはこればかりになってしまった。3、4曲目のメランコリックかつ静謐、かつノイジーという相反するミクスチャーな側面が特に好きだ。Lali Punaの面々、アンチコンのエイリアス、Death Cab For Cutieのベン・ギバード、日本のミキ・ヨシムラなどが参加している。1曲目を除いた残りの8曲をarne van petegemが書いているが、上記アーティストとの共作といっても良いのだろう。全曲心地よく聴きとおせる秀作。
「COIEDA」takagi masakatsu / W+K東京LAB
このコーナーで日本人を取り上げるのは初めてだ。理由はないが、それほど食指を動かされなかったからだろう。高木をナマで観たのは、2004年秋、代官山のクラブ〈unit〉のプレ・オープニングパーティだった。パワーブックG5とアコースティック・ピアノを繰り、チル・アウトな音楽とそれにあわせた自作の映像。そのどちらもとても素晴らしかった。驚嘆したのは映像のほうで、まったく見たことのない世界の連続だった。イマドキ、見たことの無いような映像を見れるなんてことがありえるのだろうか? 高木はそれをやっているのだ。世界中の映像作家を黙らせるほどに。本作はCDとDVDのカップリング。ライヴで観たのとはまた違う8作品が収録されて、素晴らしい映像体験ができる。
「atlantis blues」elsie bianchi trio / Sonorama Record
50年代後半からスイスで活躍していた女性ピアニスト兼ヴォーカリスト、エルジー・ビアンキ・トリオの1962年、バーゼルでの幻の録音がCD化された。この録音は9曲入り10inch盤として「アトランティス」から発売され、その希少さから長く恐ろしいほどの高値だったものだ。それに「スイス・レコード」に吹き込まれた音源も加え12曲入りとして、こうして陽の目をみた。ライヴ録音らしきエコーのかかりすぎの声がまた魅力的。トリオだが、ベーシストで夫のシロ・ビアンキはクラリネットも繰る。ただのトリオ演奏ではない魅力がこうして増幅する。そして音の素晴らしさはすでにこのジャケット写真の素晴らしさが雄弁に語り尽くしている。必聴の名作。
「The Sweetest Sound」elsie bianchi trio / SABA
エルジー・ビアンキ奇跡の再発のついでに2001年にCD化されたこの作品についても紹介しておこう。彼女のどこが特別なのかを表現するのは難しい。女性ピアニストはたくさんいるし、弾き語りではCarole Simpsonもいる。でも、何かが決定的に違うのだ。一昔前、ジュリー・ロンドンは日本ではジャズではなくポピュラー・シンガーのように言われていた。ひとえにジャズ評論家という輩の偏狭な聴き方ゆえである。だが今、中古市場でジュリーは高値だが、エラは売れない。ビアンキには似たような魅力がある。ジュリーほど天才的な声質ではなくとも美しく響く声。それを乗せる魅力的なピアノ。アメリカ偏重のジャズ史は、書き直されるべきときにきている。
「Rome After Midnight」Fabrizio Bosso / Sound Hills Records
イタリアの俊英トランペッター、ファブリツィオ・ボッソの演奏はすでに幾枚かのCDで聴いていた。だが、このリーダー作を試聴したときの興奮は、それ以前の彼の参加作品では感じられなかったものだ。ハードバップ・テイストの見事な吹きまくり。しかもそれがすべて現代を感じさせ、美しい。ジャズが死んでないことを実感させる1枚だ。このボッソのインタヴューが『jazzyell』誌に載っていたが、5歳でペット奏者の父から習い始め、15歳で早くもコンセルヴァットリオを卒業したそうな。「育ち」を感じさせずにはいられません。もっとも今のヨーロッパジャズを担っている奏者は、多かれ少なかれこんな履歴だ。『jazzyell』誌も2004年の最高傑作と言っているゾ。
「The Postcard from Brazil」Bebedelia de ritmo / Splasch Records
イタリア人ばかりの若手集団がこのThe Postcard from Brazil。名前のとおりブラジリアン・テイストで攻めまくっているが、A.C.ジョビンの2曲を除いては、ピアノのパオロ・ディ・サバティーノの作曲。その曲作りのセンスがすごくいい。1曲目から唸ってしまうほどのノリなのだが、そのノリを牽引しているのがペットのファブリツィオ・ボッソ。ともかく驚異の音数で、ボッサも彼にかかってはハード・バップなのだ。それにつられてテナーその他を繰るジャンルカ・カポラーレ以下、全員がノリまくって、これは最高に良い作品。ともかくボッソの才能に敬服するのみ。彼を知らない「ジャズ通?」がまかり通っている日本がスゴい。
「The Mirror」David Weiss / fresh sound
タイトルはすごい作品だ。あのアンドレイ・タルコフスキー監督の「鏡」。他にも「ストーカー」、「ノスタルジア」、「サクリファイス」とタルコフスキーの作品名を取った曲が続く。ちなみに僕は映画史上ベスト5に入る監督の一人がタルコフスキーだと思っているくらい彼の作品を愛している。リーダーでペット奏者のデヴィッド・ウェイスがこれらの曲を作曲しているが、その意図はよくわからない。音だけで言えば、タルコフスキーの映像をまったく連想させないバップ・テイストだからだ。それでもタルコフスキー作品が、こうした音を誘発することは少し理解できる。映画「鏡」と同名の曲が映画的でないにしてもウェイス自身が「タルコフスキー作品は観る者を別の世界へと押しやる」と言っているのだから。あとは聴く人次第だ。
「Out of Nowhere」Massimo Urbani / Splasch Records
イタリア・ジャズ界を牽引したアルト奏者マッシモ・ウルバニの1990年の録音がスプラッシュからボーナス・トラック3曲つきでリリースされた。このコーナーでも何回か紹介したバッソ=ヴァルダンブリーニのコンビが、イタリアン・モダンジャズの第一世代とすれば、ウルバニは、その次の世代と言えるかもしれない。1975年、17歳にしてパリでプレイをしていた彼は、早熟の天才肌でもあった。この作品を聴いても、そのバップ・テイストがアメリカ直系ではなく、どこかイタリア的であるのを1曲目のスタンンダード曲「I'll Remember April」ですでに感じ取ることができる。古いような新しいような不思議な成熟をみせた好作品。
re:jazz](re:mix) V.A / INFRACom!
このコーナーで[re:jazz]は紹介した? よく憶えていないがDJの作品をジャズ・ミュージシャンがナマで演奏する、というまさに「リ・ジャズ」な発想は、素晴らしい作品を生んだ。「Quiet Night」や「Cupid & Orland」は名作だった。その[re:jazz]をDJが再度リミックスしたのが、本作品。インフラコムならではの発想といえるかもしれない。全体の出来は文句なく良い。ただし、はっきり言って、すべての点で[re:jazz]には負けていると思う。DJかナマかではなく、こねくり回す前の純粋な動機のほうが、良い作品を生むということなのだと思う。でもクラブ・ジャズ好きなら一聴しておくべき一枚。
©Hitoshi Nagasawa 無断転載を禁ず。2005/2/1