14.down tempo系
15.choir系
16.ピクチャー盤
17.strings
18.europe
20.usjazz+reissue
21.usjazz
22.jazz+latin
23.monica
24.delerue
25.forktronica
26.euro Jazz 02
27.italian jazz
28.electronica+bossa
29.jazz_new
30.old & new
31.mirabassi & others
32.beat & soft rock
33.chill out & bop
34.post rockeletronic
35.acoustic
36.british jazz
37.morr+jazzland
38.hip hop
39.eurojazz+reissue
40.euro+french
41.acoustic+nordic
42.jazz+bossa music_new
「THE RISE」Julien Lourau / LABEL BLEU
じつは、このCDは僕の好みを知っている友人から今年初めにいただいたものだ。そしてこのジュリアン・ルロというサキソフォニストについて、あるいはフランスの「LABEL BLEU」というレーベルについても初めて知った。ジュリアンは30歳をちょっと過ぎたばかりで、このレーベルからファースト・アルバムを出した。1曲目の変拍子の曲、2曲目のマイナー・チューンの美しい曲も彼自身の楽曲で、素晴らしい才能を感じさせる。アルトを吹いてもソプラノを吹いても抜けが良いし、いかにも今のユーロ・ジャズらしい音の積み重ねになっている。
「MONTREAL DIARY /B」Enrico Rava, Stefano Bollani / LABEL BLEU
そして昨年パリに行っていた友人の帰国後の話題もやはり「LABEL BLEU」だった。パリのジャズ・シーンは、このレーベルを中心に回っているようだ。エンリコ・ラヴァは1939年、トリエステ生まれだからけっこう年季にいったトランペッターだ。共演するピアニスト、ステファノ・ボラーニは72年生まれでミラノ出身。イタリアーノのコンビだが親子ほどの歳の差がある。ただ、それはジャケット写真で気になって調べたからのこと。音を聴いているかぎりは、そんな年齢差も感じさせなければ、ラヴァの老いも感じさせない。60歳を過ぎてこんな演奏ができるミュージシャンは幸せだ。
「trio'01」Emil Viklicky, Frantisek Uhlir, Laco Tropp / Bohemia
チェコ出身のピアニスト、エミル・ヴィクリキも1948年生まれだから、そう若くはない。70年代から活動してきたわりには、さほど陽は当たらなかった。しかし、このピアノの音色はアメリカのジャズとは趣の異なるものだ。なんというか音が「立って」いて、ひじょうに明晰なのだ。彼が大学で数学を専攻したことと関係あるのだろうか? ちなみにバークレイ音楽院で作曲とアレンジに関して学んだ経歴を持つという。全6曲中、4曲を彼自身が作曲しているが、そのピアノの際だち方は素晴らしい。しなやかでリリカル。2001年、ブラチスラヴァでのライヴ録音。
「RECYCLING THE FUTURE」Yvinek / BMG France
Yvinekはイヴィネックとでも読むのだろうか? フランスで活動しているようだが、情報がほとんどなくて書きようもない。音は「アンビエント・フュージョン・ジャズ」だそうだ。チェロにサンプリング音やオーボエが絡んだり、なんか「インダストリアル・フューチャー・アンビエント」ってな感じ。Yvinekは、ヘクトール・ザズー(懐かしい!)や坂本龍一などのスタジオ・ミュージシャンとして仕事をしたことがあるようで、ベース、ギター、オーボエ……とものすごく多才だ。ちなみに日本人も数人クレジットされている。全体を通して「沈みゆく未来」のような情景が浮かんでくる美しいアルバム。
「Trio」Jesse van Ruller / Emakcy
1972年にアムステルダムに生まれたイェス・ファン・ルーラー(ジェシー・ヴァンと呼ばれてるが)は、パット・メセニーも絶賛したという若手ギタリスト。とはいえリーダーアルバムは、この「Trio」ですでに5枚目にあたる。以前の作品ではピアノやホーンが入ったりしていたが、今回はシンプルなトリオ編成。まあ、とりたててすごい才能というわけではないけれど、オーソドックスなジャズ・ギターで(そうジム・ホールなんか思い出したけれど)、夏の夕暮れとかに気持ちよさそうだ。最近のヨーロッパのミュージシャンに顕著だが、彼も多くの曲を自分で書いている。ユーロ・ジャズはなかなか豊かだ。
「KIND OF PORGY & BESS」Paolo Fresu / BMG France
パオロ・フレスは90年代から活躍している中堅のトランペッターだ。本作はBMGからのリリースだが、「LABEL BLEU」からもリリースしている。タイトルの「Kind of Porgy & Bess」からわかるようにガーシュイン作品集。で、僕はガーシュインが嫌いだ。「ラプソディ・イン・ブルー」なんて誰の演奏でも聴けない。しかしパオロの作品はいい。ガーシュイン曲の音の厚み、仰々しさに馴染めなくても(だいたい音を削ぎ落とすことを美としたニューウェイヴ世代だからね)、このクールで洗練されたアレンジと演奏には好感を持てる。もっとも彼の演奏は、歳とともにマイルスに近づいているようにも思える。これだって「Kind of Blue」のパロ?
「CONSIDERATION」Jean-philippr Viret / Sketch
ここ数年のユーロ・ジャズの最大公約数を言うと、ある程度の教養のある中産階級の出身であろうことが音に現れていることだ。だからブルース・コードを用いる必要もない。人種差別の苦難を歴史的背景にした黒人のルサンチマンとも言える感覚を、現代のユーロ・ジャズメンは持つ必然性もなかった。コントラバスのジャン・フィリップ・ヴィレのこの作品も、その意味でヨーロッパ的洗練と、ブッシュのアメリカの野蛮さとは無縁な、歴史的な深い美意識を感じさせる。アメリカはジャズメンと現代美術家を残して、すべて消え去ればいいのだ。イラクのパレスチナ人居住区(一般市民)にクラスター爆弾を落としたのだから。
「WALTZ FOR DEBBY」Monica Zetterlund, Bill Evans / Philips
スウェーデンの歌姫モニカ・セッテルンドはご存知の方も多いだろう。50年代末から90年代までコンスタントに良質のアルバムを出してきた女優兼歌手だ。「サバービア」だ「オルガンバー」だ、と「権威」にすがる日本の馬鹿な若者は、音楽の善し悪しよりも「レア度」で彼女のアナログにも1万近いお金を使う。64年にビル・エバンスと共演したこの作品は、モニカの代表作と言っていいもの。もちろん手頃な値段でCDを入手可能。スウェーデン語で歌われるトラッドなど涙ものだ。ジャズマニアが「ジャズ」と認めないジュリー・ロンドンに次ぐ僕のアイドルとなったのがモニカ。ともかく素晴らしい。
©Hitoshi Nagasawa 無断転載を禁ず。2003/04/12