14.down tempo系
15.choir系
16.ピクチャー盤
17.strings
18.europe
19.eurojazz
20.usjazz+reissue
21.usjazz
22.jazz+latin
23.monica
24.delerue
25.forktronica
26.euro Jazz 02
27.italian jazz
29.jazz_new
30.old & new
31.mirabassi & others
32.beat & soft rock
33.chill out & bop
34.post rockeletronic
35.acoustic
36.british jazz
37.morr+jazzland
38.hip hop
39.eurojazz+reissue
40.euro+french
41.acoustic+nordic
42.jazz+bossa
music_new
「Hopness Ep」Kim Hiorthoey / Smalltown Supersound
ノルウェーきって若手グラフィック・デザイナーであり、また近年は、ミュージシャンとしても活躍しているKim Hiorthoey(キム・ヨルティという発音が近いらしい)の新作は5曲入りCDEP。打ち込みのエレクトロニカなのだが、ベースの生音なども入れてアコースティック感もある美しくも不思議な音楽。静謐な空間にきらきらとした音色が飛び散るようなとてもいい音だ。白夜を見ていると、こういう音が生まれるのだろうか。以前、紹介したドイツのMARZにも連なるような音楽。ちなみのノルウェーのこのレーベル、日本の秋田昌美によるユニットMERZBOWとかも出している。
「Down」Pascal Schafer / Karaokekalk
ケルンにあるエレクトロニカのレーベルkaraoke kalkの作品には、僕の好みの音が多い。このパスカル・シェファーの新作も、まさにkaraoke kalkならではの音。アナログ・ノイズや1930年代のスウィンギーな歌ものがサンプリングされてバックに流れながらも、全体は、軽快で輝くような音色の群れ。どの音色も曲の展開も新鮮で美しい。Les Baxterなど、昔のエキゾ・ラウンジ系を今の打ち込みで蘇らせたようなフレーズも散見できる。全10曲、質の高い素晴らしいアルバムだ。ちなみにこれは前作「Melody Express」に続く彼の2枚目にあたる。
「Instalacao Do Samba」Toco / Schema
今や知らぬ者もいなかろうイタリアのボッサ・ラウンジ系レーベルSCHEMAから、かなり「本格的?」なボッサノーヴァの歌手が登場した。「TOCO」ことTOMAZ DI CUNTO。SCHEMAの人気ユニットS-TONE Inc.がプロデュースし「TOCO」というプロジェクト名にしたらしい。全曲TOMAZ DI CUNTOが作曲し、ギターを弾き、歌っているがともかく曲の出来が良い。1曲目の哀切なメロディなんて最高。弾き語りという点では、21世紀のジョアン・ジルベルトと言ったら褒めすぎか。ジョアンを少し金属質にしてAOR風味を加えたような感じ。歌詞にやたらと「Samba」とか「Brazil」とか出てくるのが、ちょっとウザい。
「A Mellow and Gentle Weekend」Sonia / Columbia ME
ここで、こんな安易なポップボッサを取り上げていいのかわからないが、でもかなり上質なポップチューンであることは確か。「SONIA」は99年にデビューした米国西海岸のポップボッサ・ユニット。オーストラリア生まれのポーラ・テリーがメインのヴォーカルを取っている。ちなみにここに収められた全曲が既存のものでオリジナルはない。それでも1曲目のスタイル・カウンシル「My Ever Changing Moods」から4曲目のポール・ウェブスターのインスト曲に歌詞を付けたものまで、ポーラのちょいヘタなウィスパー・ヴォイスは気持ちいいし、バックのアレンジもそれなりによくできている。
「Agustin Pereyra Lucena」Agustin Pereyra Lucena / Celeste
アルゼンチン出身のボッサノーヴァ・ギタリスト、アグスティン・ペレイラ・ルセーナの、これは1970年のデビューアルバムの初CD化。当時のアルゼンチンでは、ブラジルのELENCOレーベルの作品などがリアル・タイムで売られていたそうだが、1曲目から完全にバーデン・パウエル。と思ったらアグスティンは、少年時代からこのギタリストに心酔していたそうな。もともとはジョアン・ジルベルトから入ったらしいが、彼のギター奏法は、完全にバーデンに向かった。ここでも4曲バーデン・パウエル作品が収められているが、おそろしいほどバーデンしている。数曲入っているエレーナ・ウリブルのスキャットは拙さがウリか。
「First Enchantment」triosence / Mons Records
今回はジャズ以外のネタで行こうと思ったが、それだと取りこぼしも出てしまうので敢えて紹介。このTriosenceは、ピアノのベルンハルト・シェーラーとベースのミカエル・ケラウス、ドラムのステファン・エミグのトリオ。全曲、ピアノのシェーラーが作曲しているが1曲目から最高の緊密感をもったまま全11曲、それが緩むことなく続く。2トラックでのライヴ録音なのだが、ライヴとは思えないような完璧さ。帯に「ヒーリング系ピアノトリオ」なんて大バカなことが書いてあったが、ヒーリングでもなんでもない、まさにジャズの傑作だ。しかもどの曲も名曲揃いの必聴盤。
「Blue Landscape」Ivan Paduert Trio / Sarah!
ベルギー出身のピアニスト、イヴァン・パドゥアは1966年生まれで、すでに15年ほどのキャリアをもつ。最初はフュージョン系で始めたらしいが、2003年録音の本作は、まさに王道のヨーロピアン・ジャズ・ピアノ。よくヨーロッパのピアニストをエヴァンス系、キース系などと言うが、そういう凡庸な例えにどれほどの意味があるのだろうか? 過去の遺産無くして未来もないのだから。いずれにせよ本作は、全曲気持ちのいい演奏ばかり。多くがパドゥア自身の作曲だが、最後から2曲目はK・ジャレット作品。〈Sarah!〉レーベルは、ツボを心得たリリースでハズレ無しなのが商売上手。
「Sweet Marta」Luigi Martinale / DDQ
前回も紹介したルイジ・マルティナーレの2001年の作品「Sweet Marta」が、都内のレコード店に再入荷したので、ちょっと古いネタだが、取り上げることにした。どの曲も素晴らしい演奏で文句なしの傑作だ。1曲目のちょっと耽美的なパッションを感じさせる演奏から、2曲目のよくうねるフレーズ……と、まさにヨーロッパ・ジャズが90年代後半から急速に進化し、成熟してきたことを実感させる演奏。アメリカがいまだにジャズの本流だと思っている人は、このあたりから入ってみるべきだろう。今やヨーロッパのほうが完全にクリエイティヴィティでは主導権を握っている。
©Hitoshi Nagasawa 無断転載を禁ず。2004/05/31