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More Than You Know 1957-1959
モニカは1937年9月20日にスウェーデンのハーグフォルスに生まれた。両親も音楽家で彼女もすでに10代から歌っていて、58年にスウェーデンを代表するアルト奏者アルネ・ドムネルスのバンドのシンガーとなって注目され、この年の3月、最初のアルバム『Swedish Sensation』を録音している。このセットの1枚目にはしかし、それ以前、彼女がイブ・グリンデマンのバンドにいた1957年に録音した曲が4曲収録されている。未発表の録音だろう。それ以外にも、まず入手不可能なEP『Swedish Sensation』や『Swedish Sweet』から計7曲も収録されており、初期の彼女の初々しさが堪能できる。全曲、英語で歌われている。 |
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Monicas Vals 1960-1964
58年にデビューしたモニカが60年にはニューヨークのBell Sound Studioでピアノのジミー・ジョーンズやテナーのズート・シムズ、辣腕プロデューサー、レオナード・フェザーとの作品を残していたのは、最近まで知られていなかった。90年代にリリースされたその未発表LPを中心にゲオルグ・リデルスのオケをバックにした62年の2作目のLP(これはアレンジも良くない)から多くを収録している。が、のちにも何度か録音する「Ack,
Varmeland du skona」(ストックホルムの古名で、美しき我がヴァルムランドというような意味)や「Fly Me to the Moon」をスウェーデン語で歌った「Med Andra Ord」など他の60年の録音が泣けるほど美しい。 |
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Come rain or come shine 1964-1967
64年のビル・エバンスとの共演『Walz for Debby』を中心にその前後2枚のアルバムからの作品を中心に構成されている。スコット・ラファロ亡きあとビルが結成した新トリオ(ベースにチャック・イスラエル)が、素晴らしいバックとアレンジで、このBOXセットのなかでも白眉といえる1枚だ。なかでもスウェーデン語で歌う「Jag vet en dejlig rosa」(美しき薔薇)は、このうえなく美しく僕が彼女のファンになるきっかけともなった曲である。「Walz for Debby」は「Monicas Vals」と名を変えてスウェーデン語詞がつけられ歌われている。彼女はその後もこの曲を録音しているが、やはりビルと共演したこの作品にはかなわない。 |
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I valet och kvalet 1967-1973
1967から73年に出た4枚のアルバムから選曲したこの4枚目のCDを聞くと、時代の変化もあって、それまでの正統なジャズ・ヴォーカルからもっとポピュラーな方向に変化していってるのがわかる。いまひとつの曲もあるが、このセットを代表する名曲揃いのCDであるのも確か。とくにブラジルのヴィラ・ロボス(1887-1959)が作曲したクラシックの「バッキアナス・ブラジレイラス」(ブラジル風バッハ)に歌詞をつけた『Sov』は、彼女の全作品のなかでも最も美しい仕上がりではないだろうか? ちょっとかすれた声で淋しそうに歌う曲はどれも絶品だ。『男と女』で始まる本CDは収録曲がすべてスウェーデン語。それも素晴らしい。 |
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Under vinrankan 1975-1993
1975年に出た『Hej,mani』は、ジャズからまったく離れ、スウェーデンの古謡のような曲やボサノヴァなどしっとりとした曲が多く、このアルバムからは5曲収録されている。76年にもう一枚、80年代には4枚のアルバムを出したモニカは91と93年にも作品を発表している。89年の『Monica Z』ではボッサのドリ・カイミの作品までやっていて、デビュー時のアメリカ・ジャズを志向していた頃からの大きな変化を感じさせる。もっともすでに齢50代後半なのだ。のちに発見された60年代の録音をLP化したものを含めてアルバム総数は18枚。93年の作品では、かつてのハスキーな声は柔らかな声に変化しているが、それも重ねられた年輪の美しさと言えよう。 |
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Underbart ar kort 1959-1976 LIVE & REVY
BOXセットの最後は、モニカが出演したレヴューやミュージカルでの彼女のヴォーカルを集めたものだ。正直言って、ミュージカルなどの世界は苦手だ。ただ、ここに収録された作品は、他のEPにもアルバムにも収録されていないのでひじょうに貴重な資料だ。モニカは脇役もふくめてこれまでに13作の映画にも出演している。リブ・ウルマンとの共演作などもあるが日本では、ほとんど公開されたこともないだろう。モニカの歌は大きくはジャズとポピュラーに、そして英語と母国語にわかれる。好みはそれぞれだろうが『Sov』1曲で、いかに彼女が素晴らしいかわかるし、僕は一生、飽かずにこの曲を聴き続けることだろう。それほどに美しいのだ。 |
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