このコーナーは、アナログ盤だけを扱うために作ったものだが、最近は聴く音楽も以前のラウンジ/ダウンテンポ系やMONDOテイストからヨーロッパ・ジャズに変化しているので、もはやアナログにこだわることが無意味になってきてしまった。前回の更新から間もない今回の更新は、特別にテーマがあってのことではなく、ひとえに幾人かの取り上げたいアーティストがあってのこと。その筆頭がこのジョヴァンニ・ミラバッシだ。この最新作は2001年11月のパリでのライヴ録音盤。名盤が星の数ほどあるピアノ・トリオの演奏でも、これほどのものに一生に何度、出会えるか? と言っていいほどの素晴らしい作品だ。1曲目のうねるように始まるピアノから最後の8曲目、これは前作のソロ作にも入っていた曲だが、ここまで弛緩するところがまるでない。内省的で厳しく美しく、それでいてうねるように現代的な音楽だ。しかも美意識によって完璧に調整された音楽。まさにその瑕疵なき完璧さによって泣けてしまう音楽とは、こういうものだ。