ジョヴァンニ・ミラバッシ・トリオ、1999年のデビュー作。全曲オリジナルということでも驚きだが、そもそもすでに齢30を越えているであろうリーダーのミラバッシが、これまでフル・アルバムを作ってなかったことも驚きだ。ミラバッシにはコード進行にブルース・チューンがまったくない。そういう意味でもきわめてヨーロッパ的なジャズであり、しかも彼自身の指向が短調へ向かいやすい。そこに僕は自身の好みを投影してしまうのかもしれないが、べつにそれが「叙情的」なわけではけしてない。ライナーノーツが、こうした叙情を語ってくだらないが、これに惑わされることはない。厳密に知的な美意識。ときに弦を用いるベースはダニエル・メンカレリ、ときに意想外なドラミングで驚かせるルイ・モーチン。同世代であろうフランスのジャン=ミッシェル・ピルク・トリオなどもミラバッシ・トリオと比べてしまうと格落ちの感は否めない。とはいえやはり最新作の成熟には、これはかなわない。