これほど有名になってしまった若手ピアニストをここで取り上げるべきか迷った。それはティル・ブレナーにしても同じこと。でも、これは取り上げるべきと思った。2000年の録音だからトリオを組んで8年。メジャー・デビューして5枚目の作品だが、その完成度たるやおそるべきものだ。まるで30年くらいやって老成してしまったような簡潔にしてスキのない作品。しかも単純ではなく変拍子を使った複雑な曲作りのものも多い。そうした曲でさえ、聴くものの情感に訴えてくる繊細さも持ちあわせている。さまざまな土地をテーマにした全曲オリジナル作品だが、これほど作曲力のあるミュージシャンも近年、まれだろう。ともかくデキすぎてしまって、これからどこにいくのだろうと心配になってしまうような作品だ。もちそん買って損はないことは保証する。