「Tjader Plays Mambo」
Cal Tjader Quartet
Fantasy Records

ジョージ・シアリングのところでヴァイブを演奏していたカル・ジェイダーが最初のリーダー・アルバムを制作したのがファンタジー・レコードだ。ここで3枚立て続けにラテン・アルバムを発表する。1枚目が「Mambo with Tjader」で(1枚目を「Ritmo Caliente」としている資料もある)3作目が1954年に録音されたこの作品だから、アルバム名だけでも混乱してしまう。ちなみにけっこう、ジャズ通を自認している人でもカルのことを知らないものは多い。このあたりのジャズ好きの偏り方が僕は非常に気にくわない。自分の耳でいい音楽を発見するよりもジャズ評論家の名盤紹介本ばかり信用しきっているのではないか? ところで「評論家」は演奏できるのか? もちろん僕も油井正一氏のラジオ番組で育ち、彼の本から大きな影響を受けたし、油井氏の評論はほんとうに素晴らしいと思う。でも、それ以降いったいどれほどの評論家が生まれたことだろうか? それはともかくとしてカル・ジェイダーを評価したのがジャズ界よりもサバービア系とかラウンジ系だったことをジャズ通たちは恥ずべきだろう。カル・ジェイダーとデイヴ・パイクこそを聴くべきなのだ。で、本作は? 若き日のカルの洒脱さが堪能できる佳作である。ちなみにこれは87年のリマスター盤。