エキゾティック・サウンドの第一人者マーティン・デニーも、ここでどれを取り上げるかとなると悩みに悩む。ジャケット的には「EXOTICA」や「AFRO-DESIA」が好みだが、ここではあえて、それらに比べて流通量が少ないと思われ、しかもイカれたデザインの「LATIN VILLAGE」を持ってきてみた。この作品は1962年の録音で、1956年に「EXOTICA」を発表して以来、60年の「Exotic Percussion 」まで続いたエキゾものとは、多少、趣を異にするもだ。13枚近いエキゾ路線が、多少飽きられてきて新趣向を模索しはじめた60年代のマーティン・デニーのさまざまな試みのなかのひとつといえよう。たしかにサウンド的には変化はしているが、根底に……たとえばピアノのアレンジなどにデニーらしさは、否応なく出てしまうもので、僕は、この60年代の多様なデニー・サウンドもかなり好きだ。マーティン・デニーの再評価は70年代後半の第一期から大きな波で90年代半ばまで3回ほどあったように思う。今は一段落なのでアナログ盤も安く入手し易い。