バーデン・パウエルに関しては、詳しい方がいくらでもいようからここで僕がさほど書く必要もないだろう。CDもかなり再発されているし、僕の勝手な言い方をすれば、バーデン・パウエルはすべて好きだ。この2枚組アルバムは1973年のオリジナル盤らしいが、CDだと2枚に分けられて別のもう1枚のほうに「All the Things You Are」が、入っているのでお間違えなく。1958年頃ボッサの数々の名曲の作詞家にして外交官でもあったヴィニシウス・ジ・モライスと知り合ったパウエルは、モライスがパリに赴任していた時代、自身もパリに移住して作品づくりを伴にした。「ビリンバウ」などもその頃の名作だが、このアルバムの「All the Things You Are」は、全曲のなかでも最高の出来映えだと思う。アレンジといい、テクニックといい申し分なく、しかもジャズでは聴けないもっと哀切に満ちた曲となっている。今回の紹介作のなかでも一番のお薦めである。