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ポルノ・ムービーの映像美学




エディソンからアンドリュー・ブレイクまで 視線と扇情の文化史

THE VISUAL
AESTHETICS OF
PORN MOVIE

HITOSHI NAGASAWA

Pre-Code Hollywood

1930年から1934年までの期間、アメリカには映画の倫理規制の弱い時期があった。
それはなぜか? どのようにして規制が強化されて性的な表現は抑圧されていったのか。

Nudy Cutie

1950年代末からインディペンデント系の監督によって作られてゆくヌードもの映画。
ラス・メイヤーを筆頭にヌーディー・キューティーにまつわる作品群を俯瞰する。

Sexual Revolution

『私は好奇心の強い女』という作品がスウェーデンからアメリカに輸入されるが、
押収され裁判となる。いかにしてポルノ・ムービーは合法化されていったか。

Golden Age of Porno

『ディープ・スロート』のヒットとともに次々とポルノの傑作が誕生し、
それは“Porn Chic”と呼ばれた。1980年代前半までを“Golden Age of Porno”と呼ぶ。

Adult Film Graphics

“Golden Age of Porno”の時期、ポルノ・ムービーのポスターには数々の傑作が生まれた。
語られてこなかったポルノ・ムービー・ポスターの制作者たちの詳細。

ポルノ・ムービーの誕生から、倫理コードとの知られざる攻防、いつどこでどのように公的に認められ、映画史のなかで発展していったのか? 「視線」と「扇情」をキーワードにポルノ・ムービーの100年にわたる光芒史を体系化する野心作!

本書は、映画草創期から存在したポルノ・ムービーを 時代のエポックとともに追うことで、いままで正当に語られることのなかったこの知られざる映画文化をさまざまな視点から歴史的に体系化しようという試み。 サイレント期から始まる映画の内容、あるいは撮影技法の変遷を辿り、女優や監督たちの知られざる個人の物語を紡ぎ、そしてまた、これまでファッション史や視覚文化に関わる本を書いてきた著者ならではの独自の視点によって、映画に登場する流行風俗や身体文化を「拡張したエロティシズム」の世界像として読み解く。 ポルノのなかに潜む映像美学、その実験性、先進性、あるいは流派などを500点以上の図版とともに分析することで、実際にその映画を観てなくとも、ポルノ100年の歴史と文化を多面的に理解できるように工夫がなされている。アメリカを中心に100 年にわたる年代記として辿り、巻末には117人に及ぶ女優・男優名鑑を添えることでポルノ・ムービーに関わる事象・人物を網羅。38万字という膨大な文字量でポルノ・ムービー100 年の歴史を辿るまさに百科全書となりえる画期的な文化史。



目次

1. 日本におけるサンドラ・ジュリアン神話の成立
2. 映画草創期からアンダーグラウンドで製作されたポルノ・ムービー
3. 「プレ・コード・ハリウッド」という映画群
4. 反悪徳十字軍としてのコムストック法
5. カトリック矯風団とヘイズ/ブリーンによる検閲厳格化
6. スタッグ・フィルムからセクスプロイテーション映画へ
7. ラス・メイヤーとヌーディ・キューティの時代
8. セクシュアル・レヴォリューションと「ポルノ解禁」
9. アダルト・フィルム・グラフィックス
10. ゴールデン・エイジ・オブ・ポルノ
11. 百花繚乱の女優たちとフィルム撮り大作
12. ゴールデン・エイジの終焉とリンス・ドリームの夢なき世界
13. アンドリュー・ブレイクによる洗練を極めたポルノ神殿
14. ゴージャスでネイキッドな90年代的ボディ
15. ニューウェイヴ・フッカーズから90年代の新鋭監督へ
16. そしてマーク・ドルセルだけが残った
17. レクイエム──去りゆく者たち

        



1.日本におけるサンドラ・ジュリアン神話の成立

外国産ソフトコアと東映「ポルノ」路線
宣伝用語としての「ポルノ」ブーム
ヨーロッパ女優の活躍とDVD BOXセットでの復活
ポルノ上映館と雑誌『ぴあ』



『絶頂の女 フロッシー』1974
※日本に最初に欧米ポルノが入ってきた頃の人気女優、マリー・フォルサ主演映画の海外でのポスター。

2.映画草創期からアンダーグラウンドで製作されたポルノ・ムービー

エロティック・フィルムの始まり
最初期のハードコア・ポルノ・ムービー
16ミリフィルムの誕生
〝スタッグ・フィルム〟と〝ブルー・ムービー〟


3.「プレ・コード・ハリウッド」という映画群

規制が厳密に運用される以前のハリウッド映画
ロスコー・アーバックル事件と酒池肉林のハリウッド


4.反悪徳十字軍としてのコムストック法

郵便物規制として始まったコムストック法
アンソニー・コムストックと「彼の法律」


5.カトリック矯風団とヘイズ/ブリーンによる検閲厳格化

カトリック側によるハリウッド映画界への攻撃
製作規制委員会の組織化による規制の厳密化


6.スタッグ・フィルムからセクスプロイテーション映画へ

1930年代のスタッグ・フィルム
ハリウッドのスタジオ・システムの崩壊
エキゾチズムとヌーディズム
バーレスク=ストリップ・ティーズ
ドリス・ウィッシュマンとヌーディズム映画
アーヴィング・クロウとボンデージ・フェティシズム



The Stiff Game 1930年代に作られた「スタッグ・フィルム」のワンシーン(当時はポルノのことを「スタッグ・フィルム」「ブルー・ムービー」等と呼んだ)。

7.ラス・メイヤーとヌーディ・キューティの時代

認められなかったヌーディ・キューティ映画の多作家、バリー・マホン
ミスター・ティーズ、ヌーディ・キューティ映画の誕生
なし崩しに形骸化していったヘイズ・コード
セクスプロイテーション映画の雄、ラス・メイヤー
ポルノ解禁前夜のエロティック事情



Bunny Yeager's Nude Camera(「バーニー・イーガーズ・ヌード・カメラ:日本未公開)のロビー・カード。1963
※バリー・マホン監督。低予算のヌーディ・キューティ映画を量産して忘れ去られた監督が、モデルからカメラマンになった美女、バーニー・イーガーを主演に彼女がヌード撮影しているところをドキュメンタルに撮影した作品。

8.セクシュアル・レヴォリューションと「ポルノ解禁」

〈グローブ・プレス〉と『私は好奇心の強い女』
エロティック出版と裁判
ディープ・スロート』とジェラルド・ダミアーノ
『グリーンドア』と〝ポルノ・シック〟
ポルノ解禁と反動
ラドリー・メツガー=ヘンリー・パリスの映像美学
二人の監督人生を終わらせたフレッシュ・ゴードン
ファンタジー・ポルノのメルクマール、『アリス・イン・ワンダーランド』
『スルー・ザ・ルッキング・グラス』、鏡面世界の誘惑
歌って踊る『シンデレラ2000』は、2047年の未来世界



夜行性情欲魔(原題:The Lickerish Quartet)1971
※ラドリー・メツガー監督。複雑なプロットを持った幻想的なソフトコア・ポルノ。床にはエロティックな単語が辞書のように書かれており、このあとのセックス・シーンではそれらの単語がセックスとともにアップで映し出される。


炎(原題:Camiile 2000)1969
※ラドリー・メツガー監督。アレクサンドル・デュマ=フュスの原作『椿姫』を現代に置き換えたソフトコア・ポルノ。ファッション、ロケーションともに多額の予算を使った美学的にも傑作な作品。

9.アダルト・フィルム・グラフィックス

バンビは森のどこに消えてしまったの?
ツートーン・グラフィックス
大手広告代理店のポルノ広告への参入
匿名イラストレーターらの活躍
未来イメージと懐古イメージ



The Satisfiers of Alpha Blue(日本未公開)1981
※ジェラルド・ダミアーノ監督。SF仕立てのハードコア・ポルノ。『ディープ・スロート』で、ポルノ解禁の立役者となったダミアーノ監督だが、この作品は日本公開されなかった。出来はいいし、ポスターのデザインもキャッチーで良い。

10.ゴールデン・エイジ・オブ・ポルノ

ビデオ・デッキの登場とポルノ産業の巨大化
ブルーフィルムを「再発見」した監督アレックス・デレンジー
アンソニー・スピネリ、ストレート映画での挫折とポルノ
ロジャー・コーマンの門下生だったロバート・マッカラム


11.百花繚乱の女優たちとフィルム撮り大作

インテリ美女、ジュリエット・アンダーソン
ポルノ・ムービー・アワードの変遷
華やかさと演技力が魅力だったヴェロニカ・ハート
シャーナ・グラントはなぜライフルの引き金を弾いたか
トレイシー・ローズと年齢詐称事件
ポルノ黄金期を彩ったそのほかの女優たち
エイズ禍とレーガン政権によるポルノ業界弾圧



New Wave Hookers『ニューウェイヴ・フッカーズ』のポスター。(日本未公開・ビデオ発売)1985
※グレゴリー•ダーク監督。トレイシー・ローズ、ジンジャー・リンなどが出演した80年代ポルノの傑作。トレイシー・ローズが未成年で出演していたことが、のちに発覚しポルノ業界はFBIによる捜査やビデオの発売禁止などで大打撃を受けた。この作品はのちにトレイシー出演部分のみ削除してDVD化された。

12.ゴールデン・エイジの終焉とリンス・ドリームの夢なき世界

第三次世界大戦後のセックスを描いた奇作『カフェ・フレッシュ』
ドイツ表現主義を継承した『Dr.カリガリ』
常識化する陰毛のケアという人工性にみちた「技法」



Dr.Caligari『Dr.カリガリ』(日本未公開)1989
※リンス・ドリーム監督。1920年代の「カリガリ博士」の末裔がマッド・サイエンティストとして人の脳髄で20年代の「カリガリ博士」再生の実験をするというソフトコア・ポルノ。極めて前衛的な映像表現の傑作。



Cafe Flesh『カフェ・フレッシュ』(邦題:『愛の終焉』劇場未公開:ビデオ発売)1982
※リンス・ドリーム監督。第三次世界大戦後、放射脳汚染で99%の人がセックス不能になり、残りの1%は国家によって管理され、99%の不能者の観覧用に〈カフェ・フレッシュ〉というクラブの舞台で「見せるセックス」以外に禁じられるというユニークなストーリーのカルト的ポルノの大傑作。

13.アンドリュー・ブレイクによる洗練を極めたポルノ神殿

アンドリュー・ブレイクがポルノ・ムービーの文体を変えた
裏ビデオ販売からP2Pの時代、オリジナル映像流通の国内事情
ブレイクの最高の洗練を示す三作品
下着のエロティシズム
ブレイクの亜流、キャメロン・グラント



Les femmes érotiques『ル・フェム・エロティーク』1993
※アンドリュー・ブレイク監督。全編、高身長の美女ばかりを揃え、お洒落な映像ばかりで一編に仕上げた傑作。アンドリュー・ブレイクが世界のポルノを革新した。


Sensual Exposure『センシュアル・エクスポージャー』1993
※アンドリュー・ブレイク監督。1950年代のジョン・ウィリーのボンデージ・イラストに想を得たシーン。


Sensual Exposure『センシュアル・エクスポージャー』1993
※アンドリュー・ブレイク監督。主演の美少女、ケリー・オデルのアップ。

14.ゴージャスでネイキッドな90年代的ボディ

ディケイドによる変化と肉体性の顕現
90年代前半最強のエロ、トリー・ウェルズ
ヴィクトリア・パリス、作られたパーフェクト・ボディ
90年代を象徴するゴージャス・ボディ、セレステ
エイジア・キャレラはIQ156
絶世の美女レイヴン
クリスティ・キャニオンは性格がよかった


15.ニューウェイヴ・フッカーズから90年代の新鋭監督へ

グレゴリー・ダークは「ダーク・ブラザーズ」として自分たちをブランド化した
ジョン・スタグリアーノ、ゴンゾ・ポルノと尻フェティシズム
ジョン・レスリー、名俳優は、名監督となった
マイケル・ニン、CGとボンデージのクラブ世代監督



LATEX(日本未公開:ビデオ発売)1995
※マイケル・ニン監督。ラバー・フェティシズムやラテックス・フェティシズムが当時のクラブ・ファッションとも連動し、さらに音楽にもテクノ・ハウスなどを使って、当時の最新の映像感覚をもったハードコア・ポルノ。『SEX』、『LATEX』、『SHOCK』の3作品でマイケル・ニンは、CG映像も多用して、ポルノの映像文体を革新した。

16.そしてマーク・ドルセルだけが残った

エレガントでエロティックだった『ル・パルファム・ド・マチルダ』
フレンチ・ポルノを担った監督、ミシェル・リショー
ミシェル・バルネ、すなわちディディエ=フィリップ・ジェラール
ヌーヴェル・ヴァーグ運動に関わったプロデューサー、フランソワ・ルロア
エリカ・ベッラはヨーロッパ最強のエロ顔だった
ハンガリアン・ガールズの世界的活躍
イタリアの至宝セレン、そしてサリエリ監督
スウェーデンの巨大レーベル〈PRIVATE〉



Le parfum de Mathilde『ル・パルファム・ド・マチルダ』(日本未公開)1994
※マーク・ドルセル監督。ロールス・ロイスから豪壮な屋敷まで、シックでゴージャスを極めたマーク・ドルセルの傑作ポルノ。フランス出身の彼が1990年代以降のヨーロッパ・ポルノを牽引し、商業的にも自身の製作プロダクション(MDP)をヨーロッパ最大のポルノ企業にまで発展させた。

Reve de Cuir (日本未公開)1992
※フランソワ・ルロア監督。極端にハイキーなトーンを使ったり、さまざまな映像的実験をしながらもハードさもあったフランスのハードコア・ポルノの傑作。

17.レクイエム──去りゆく者たち

女優名鑑 95人
男優名鑑 22人

ポルノ・ムービーの映像美学

エディソンからアンドリュー・ブレイクまで 視線と扇情の文化史


長澤 均(著)

サエキ・けんぞう、中原昌也、ヴィヴィアン佐藤、各氏推薦(帯文)


定価(本体3,000円+税)
発売日 2016年6月29日
サイズA5 ソフトカバー
単行本: 432ページ
出版社: 彩流社 (2016/6/29)
ISBN:978-4-7791-2226-2
総写真点数 ; 534点

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