2007. 06
ワコール乳房文化研究会講演

 以前書いたWEBマガジン「verita」のパーティで、翻訳家でありライターでもある女性を紹介された。ファッションをメインにしたカルチャー史が好きな人で翻訳したものもそういったものが多かった。あとでお互いに著書なりを交換しあったのだが、この人がワコールが主宰している「乳房研究会」なるものの運営委員もしており、年2回ある定例の講演会での講演依頼をしてきた。
 ワコールの本社は京都にあり、そこでの講演。内容は50年代のパルプ・マガジンでの露出と隠蔽の攻防などをメインに据えたが、話はルネサンスから日本のキモノや家屋の空間意識にまで及んだ。ちなみにアメリカでポルノ解禁以前、検閲が厳しくパルプ・マガジンの挿し絵で、見えそうで見えない絵が隆盛したのは、コムストック法という法律があったからだ。だから巧妙にやらしい構図が考案されていった。多岐にわたった内容の詳細をここで触れる余裕はないが、これまでの研究会でも美術史家がまったく触れなかった部分、16世紀の「グロテスク紋様」についてちょっと触れておこう。これは女性の手足が植物の蔦のように変化して紋様化していくものだが乳房だけは描かれて、それが女性をモチーフに植物紋様化されたのだとわかる。当時紀元前1世紀(つまりキリスト教以前)の洞窟(グロッタ)で紋様が多く発見され、それを画家らが模写し、お城の装飾などに使ったことで流布したものだ。
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